幕間・TOAキャラの末路じゃらり、となんだかトゲのついたどでかい鉄球を床に転がし、その人物は甲板で二人を出迎えた。 「…どいて。私達は大佐に報告があるの」 元々悪い目つきが更に悪くなる。 「あーと、セリィだっけ?そういうことだからさ、」 こっちも何やらわかってない。 「…べ」 「え?」 「先輩と呼べェーー!!」 同時に、棘付き鉄球が飛んできた。 「うぎゃああああああ?!」 「あ、あなたわかってるの!?これは皇国 への反逆ととられても」 「五月蝿い。じゃあ帰れ。いてくださいと誰がいつ頼んだ? 勘違いしてんじゃねえぞ小娘が」 どう考えてもtはある鉄球を軽々と使いこなし、 セリィは言い放つ。 「な…?ここって、皇国のギルドじゃ…?」 「お前ら、クビ心配しな?あの眼鏡が 親善大使を守りきれず、剰え負傷させた上に 不敬な言葉を吐いた事。すべて報告済。先刻 眼鏡は帰国した。すれ違わなかったか? 黒い布で隠された船と。」 多分軍法会議だろーねー、と笑みを足す。 右手に巻いていた鎖を弄びながら、セリィは 続けた。 「で、ルーク様を救出したという事で名誉ギルドに序する、とさ。 ただ他は守護のーーああもうめんどい、職務怠慢でどうにでもしてくれ とさ。 軍籍剥奪、国民権剥奪。煮るなり焼くなり好きにしてーだせうだ。」 流石に、二人とも唖然とした。 軍にも、国にも、帰れない…? 茫然自失している二人から目を離さずに、 背後へと声をかけた。 「ーーそれで?ルーク様。あなたはどうなされたいのです?」 びくっ!とそんな音さえ聞こえたかと思うほど、ルークは 驚いた。 「…陛下が決めた事だろ?…なら、俺…」 声が、消える。 [自分]を殺す事を、知っている。 ほんとうは、あの二人を助けたい筈だ。 彼は優しいから…、あんな不出来なものでも 助けたいと、願っている。 「ーーならば、よいですね」 鎖が鳴った。 「ーー~やめてくれっ!!」 セリィの右手に飛びついた。その時、見てしまった。 ぞっとするほど、冷たい緋の瞳。表情のない、… じゃらじゃらじゃらあん…。支えを失った鎖が、 床に落ちた。 どの位、そうしていただろうか。 実際には、ほんの数分、だろうが。 「…う…」 吹っ飛ばされたガイの呻きが聞こえた。 「ガイ?!」 「利き腕を潰しただけ。」 「あ…?」 ティアの髪は、肩より少し短く、そして、 「片眼を潰した。髪を伸ばすなら要らないだろう?」 「あれで、よかったんだよな」 「ええ。いい勉強代になったでしょう。対外的には、 両名共死んだことになっていますし。」 あの後、二人はバンエルテイア号の一室で手当を受けている。 ガイは日常には支障ないものの、二度と剣は持てなくなった。 ティアは、まだ目が覚めない。 眼球を摘出したからだ。 ややあって。 ルークが口を開いた。 「なあ…なんでさっきから敬語なんだよ…?」 立ち位置にしたって、ルークから一歩下がった後ろにいる。 「…あなたが、ルーク・フォン・ファブレ様だからです」 私は一介の傭兵。許可を頂けない限り、あなたと同じ位置に立つ事は愚か、 御顔を拝見することも出来ません。 そうか。 これが、俺の定められた道か。 陛下、あんた、これがいいたかったのか。 国を出る時に云った言葉はーー 「ならば、命じる。我が名に於いて、セリィ、 お前は…友人でいろ」 「御意」 顔を見ると、ルークの瞳が揺れていた。 「ごめん。…辛かったろう?オレ達から見たらどんな に無礼者でも、ルークにとっては、友人だもんな。」 雫が溢れるのに、そう時間はかからない。 自分より背の低い、セリィにしがみつくようにして、 嗚咽が聞こえた。 「泣いていいよ。恨んでいいよ。…お前は國を任される 立場の者だ。今のうちに、抜け道を作っとけ。」 「恨んでなんか…、ない!ああでもしなけりゃ、ガイも ティアも、殺されてたんだろ?!」 それは間違いない、とセリィは頷いた。 「アニスみたいに。」 「…え…?」 「ああ、ルークは知らなかったかな。ジェイドを 連行する時に抵抗したんで、殺したんだ」 また、あの瞳。 緋いのに、とても冷たい…、 「こ…ろ、した?」 「ああ。オレが。この手で。」 くつり、とわら、った。 「なあーールーク。 これでもおまえ、 オレを恨まない?」 月が出ていた。 とても、緋かった。 ジャンル別一覧
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